旬の素材を生かし、相手を思いやる懐石の心
懐石料理には、「旬のものを使う」「素材の持ち味を生かす」「親切心や心配りをもって調理する」という三つの大原則があります。当店では私の祖父が裏千家家元から直々に茶懐石の心を伝授されて以来、ひたすら純粋に、これらの原則に基づいた料理づくりに励んでまいりました。
「旬のものを使う」とは、いうまでもなく、それぞれの素材が最も美味しい時期に使う、ということです。良い素材を買い求めるのは、料理の基本中の基本であり、要するに料理とは、材料を買いにいくとことから始っているといってもよいでしょう。また、せっかく良い材料を仕入れても、調理するまでに劣化させてしまっては意味がありません。例えばホウレン草は放っておくとすぐに萎れてしまいますが、濡れた布きんに包んで暗所に置いておくことにより、鮮度を保つことができます。「素材の持ち味を生かす」とは、鮮度の良いものだけが持っている素材の甘みを生かすことであり、仕入れた素材を調理するまで良い状態で保存しておくことも、たいへん重要な要素になるのです。
そして、最も大切なのが「親切心や心配りをもって調理する」ことです。例えば、年配のお客様にには柔らかめの料理をおつくりする、お酒がお好きなお客様には、お酒をゆっくり飲めるよう料理をを出す間隔を長めにとる、という具合に、常に相手を思いやることが懐石の心であるといえます。私どもはこれからも、心のこもった懐石料理をつくり続けていきたいと願っております。
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